残業しないで帰りなさい!
白石さんがじっと私を見る。
「つまりさ、藤崎課長と青山さんって、トモダチ以上コイビト未満ってことでしょー?」
「え?」
課長とは友達でも何でもない。むしろ、あんな年上の人のことを友達だなんて、恐れ多い。
「そんな、課長と友達なんて、とんでもないです……」
「じゃあ、ただの男以上恋人未満ってことですよね?」
「ええっ?」
ニヤッ笑う沢口さん。沢口さん、クールかと思いきやそんな感じ?なんか、意外だなあ。
白石さんはわざと悪い顔を作ってヘッヘッヘと笑った。
「私たちの見立てでは、藤崎課長は間違いなく青山さんのこと好きなんだと思うんだよねー」
「そうそう。それも相当ですよね」
「そ、そんなことは……」
……ありえないよ。
「だいたいさー、久保田係長と話してほしいって最初に言った時は超めんどくさそうな顔したくせに、青山さんが閉じ込められてるって言った途端に立ち上がったもんねー」
「そうそう、顔色変わりましたよね!」
「どういう状況か、すぐにわかったんだよ」
「青山さんを助けたい一心だったんじゃないんですか?」
「やっぱ藤崎課長、青山さんのこと、絶対好きだって!間違いない!」
そんな……。そんなわけ、ない。だって、課長は久保田係長と付き合ってたんだよ?
「そんなの、ありえないですよ」
私はうつむいて首を振った。