残業しないで帰りなさい!

木苺のパフェは甘酸っぱくて美味しかった。
ハンバーグの味は感じなかったくせに、甘さを感じる味覚は別腹ならぬ別舌らしく、パフェは美味しくてペロリと全部食べてしまった。

課長は私の代わりにハンバーグを食べると、頬杖をついてパフェを食べる私を優しい瞳でじっと見ていた。

そんな瞳、胸に深くに刺さります。
まるで私まで甘い甘い女の子になれたような錯覚に陥る。

それに……、あんまりじっと見られたら、正直言って食べづらいです。

でも……。
すごく嬉しかった。
素直に女の子でいられて、嬉しかった。

途中で涙は止まったけれど、どうしてあんなに涙が出てきてしまったんだろう。

すぐ泣く私に課長はずっとごめんと言って、謝りっぱなしだった。

私の方こそ、ごめんなさい……。

課長は私を好きだと言ってくれた。付き合ってほしいと言ってくれた。

それなのに、すぐに返事をできない私を許してください。

今の私は、課長の前で女の子でいるだけでも、限界寸前の精一杯です。
女の子でいるだけで涙が出るほど、いっぱいいっぱいなのです。

帰り際、課長は「心配だから家まで送るよ」と言ってくれたけれど「私は大丈夫ですから」とお断りした。

そうしたら、また例のすごく寂しそうな顔をするから、私のせいみたいで申し訳なくて、結局「じゃあ、お願いします」と言ってしまった。

その顔、課長の作戦なのですか?それとも単に感情が顔に出やすい人なの?

帰りの道中は会社の昔話を聞いたり、部活の話をしたりして、この間と同じですごく楽しくて、やっぱり年の差なんて全然感じなかった。

課長の笑い声、とても耳に心地いい。
笑顔を見るとほっとする。もっとたくさん話したい。もっと一緒にいたい。

私はあなたが大好きです。
ただ、それを伝えられないだけなのです。
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