残業しないで帰りなさい!

『あのさあ、香奈は自分に自信が持てなくて、そんなこと思うのかもしれないけど、「私なんか」なんて思わなくていいんだよ?人を好きになる気持ちは自由なんだから。誰だってどんな人間だって、人を好きになっていいんだよ』

「うん……」

瑞穂はすごいなあ。よくそんなこと、すぐに思いつくなあ。

『アンタがなんで自分に自信がないのかもよくわかんないよ。もっと自信持っていいんだよ!もう自分のこと、私なんかって思わないこと!これ約束!』

「うーん……」

『やーくーそーくっ!』

「んー……」

そんなに簡単に自信なんて持てないなあ。

『だいたいアンタね、そんなちょっとしたことで泣くようなめんどくさい女でもいいって言ってくれてるんだよ?ありがたく、さっさと引き取られなさい!』

「え……」

めんどくさい?考えてみたら、あんなにすぐ泣いて、確かにめんどくさいかもしれない。

『明日すぐに返事しなさい!』

「ええっ!?」

そんなの無理!

『だって、王子様なんでしょ?すぐ取られちゃうよ?待ってるって言ったって、男なんてそう長くは待ってくれないよ?』

「うーん……」

『彼のそばにいたくないの?』

あ、それは……そばにいたいかもしれない。

「……そばに、いたい」

『じゃあ、わかるよね?どうすればいいのか』

うん……。
私、課長のそばにいたい。
もっとたくさんお話しして、もっと課長のことを知りたい。もっと私を知ってほしい。
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