残業しないで帰りなさい!
朝になって目が覚めたら、目の前に翔太くんが寝ていたから、最初ものすごく驚いた。
そうだった。
抱き締められて一緒に寝たんだ。
……。
瑞穂先生、大変です!
先生の授業と違うことが発生しました!
だって。
翔太くんは、本当に何もしなかった。
家に連れて帰るのはそーゆーことをするつもりだから、なんじゃなかったっけ?
えっと……翔太くんはこれで良かったのかな?
まあ……、いっか。
枕に半分顔を埋めた穏やかな寝顔をじっと見つめる。本当に寝ている顔は、寝ているふりしていた時とはちょっと違う。でも、やっぱり王子様だなあ。
静かな寝息。少しだけ開いた唇。長いまつ毛。黒いツヤツヤな髪。
その黒髪にもう一度触りたくなってそっと触れてみた。
いい手触り。
「……う、ん?」
あ、起こしちゃった。
ぼんやりと翔太くんが目を開けた。
まだ目を大きく開けられずに何度もまばたきをしている。
「……香奈ちゃん……まだ疑ってんの?ホンモノだよう」
「疑ってないよ!」
私を無視して、翔太くんはふにっと笑った。
「おはよ」
「……おはよう」
ああ、寝起きの翔太くん、いいなあ。のんびり感百倍増しで、すっごくいい。
のんびり感百倍増しなのに、翔太くんは何の迷いもなくいきなり私に手を伸ばしてぎゅうっと抱き締めた。
予想外の素早い動きに、私はなすすべもなくされるがまま。
「キスしたい」
翔太くん、寝ぼけてるの?
そのままチュッとキスをしてフフッと笑った。
「香奈ちゃんがいるー。嬉しー」
私を抱き締めたまま、ごろごろする翔太くん。
翔太くん、かなり寝ぼけてるね?
でもそんな翔太くん、たまらなくいい。ずっと見ていたい。