残業しないで帰りなさい!
それをキッチンペーパー、がなかったから重ねたティッシュペーパーで包んでギュッギュッと形を手で整えた。
さて!どうかな?
ティッシュペーパーをピラッとはがす。
現れたのは、黄色い楕円形のオムライス。割れもないし、ツルッとしてていい感じ。
「できたっ」
「おおっ!すごーい!ちゃんとオムライスだ!香奈ちゃん、すごーい!」
「フフフッ」
そんな感じでもう一個作った。
うんうん。どっちもいい感じにできたかな?
付け合わせはちょっとサボって、袋で売ってた千切りキャベツをオムライスの横に盛る。
「ケチャップでハート書いて!」
ん?
悪趣味だなあ。
でもしょうがない。書いてあげよう。
黄色いオムライスに赤いケチャップを絞ってハートを書いたら、本当にいかにもな感じで、ちょっと照れて胸がむずがゆくなった。
「早く食べよっ」
翔太くん、嬉しそう。
うまく作れて良かったなあ。
昨日みたいに二人掛けのダイニングテーブルに向かい合って座った。
顔を見合わせてふふっと笑う。
二人で「いただきまーす」と言ったら声が揃ってまた笑った。
どうかな?美味しくできたかな?
スプーンをオムライスに差し込む翔太くんをじっと見つめる。
パクッと大きな一口を食べる翔太くんは、ファミレスの時みたいに、ふにっと笑った。
「うまーい!」
その笑顔を見てハッとした。
なんかなんか、胸が痛い。
好きな人に自分の作ったご飯を美味しいって言ってもらえるのって、こんなに嬉しいんだ。
こんなに幸せなんだ。
本当に嬉しくて幸せで、たまらない気持ちになる。
こんな気持ち、知らなかった。
あなたがいると、私、本当に幸せ。
私、ずっとずっとあなたのそばにいたい。