残業しないで帰りなさい!

それからというもの、今まで全く手を出さなかったことが嘘みたいに翔太くんは私を求めてくるようになった。

だから、気になって聞いてしまった。

「もしかして、ずっと我慢してた?」

「うん。すっごい我慢してた」

「……いつから?」

「うーん?香奈ちゃんが初めてここに泊まって、俺の匂いを嗅いだ時から、かなあ」

「えっ?なにそれ?」

「あれはなんか、ヤバかったねえ」

だからダメって言ってたんだ。
くすぐったいからダメなんて、嘘つきだなあ。

いえいえ、翔太くんはとても優しくて我慢強い大人なのです。
あの時はきっと、今はまだその時じゃないって思ったんだよね?

「でも、もう我慢しないでね?」

「してないよ?」

「翔太くんの本当の姿を見ていたいから」

翔太くんがフッと笑ったから、わざと近付いてふんふんと匂いを嗅いでみた。
相変わらずボディーソープのいい香り。

「香奈ちゃん、自分が何してんのかわかってんの?」

「匂い嗅いでるの」

「違うでしょ?誘惑してるんでしょ?」

「ふふっ、うん。ゆーわくしてみたっ」

翔太くんは上半身だけ起き上って、両手で私の肩を柔らかく押さえ付けた。ベッドに押し付けられる心地いい圧迫感。

「香奈ちゃんに誘惑されたら、応えないわけにいかないじゃない」

その瞳もそのくちづけも、糖度が高くて濃厚で、私はいつも甘い甘い女の子にされてとかされてしまう。
私の王子様はいつも糖度全開です。
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