残業しないで帰りなさい!
女の子扱いされたくないんだけどな……。
私は背が高くて力持ちで。
だからこのくらい全然平気なのに。
「重たいとか、そういうのは全然問題ありません」
「ん?いいから、そういうこと言わないの!」
今まで柔らかい物腰だったのに、少し強く言われると言い返せなくなってしまう。
それからなんとなく黙ってしまって、黙々と段ボールにサンプルを詰めた。
そして、段ボールを持ち上げて台車に乗せようとしたら、藤崎課長は目を細めて「俺がやるから」と私を制止し、段ボールを受け取ると台車に乗せた。
藤崎課長から見たら、私は『女の子』に見えるのかな。
女として見られるのは、怖いのに……。
だから化粧もしないしショートカットだし、私服ではスカートも履かないのに。
「車はどれ?」
「3号車です」
「じゃあ、乗せて来てあげる」
「え?そんな、いいです」
私がそう言うと、藤崎課長は『また同じことを言わせるの?』という目をしたから、思わずうつむいた。
「……じゃあ、一緒に行きます」
「うん」
二人でエレベーターホールに立った時、時計を見上げたらもうすぐ9時になるところだった。
「こんなに遅くなってしまって、本当にすみませんでした」
「いやいや、全然いいんだ」
ポーンと音を立てて到着したエレベーターに、ガラガラと台車を押して乗り込む。
藤崎課長、こうして並んでみるとやっぱり大きいな。でかい私よりずっと大きいもの。180以上?185くらいある?
でも、見上げる勇気はなくて、なんとなく右側に感じる気配だけで大きさを測っていた。