残業しないで帰りなさい!
地下の駐車場でサンプルを車に乗せ、車の扉をバンッと閉じて空の台車を手にしたら、やっと終わった感じがした。
疲れたなあ。小さくため息をついた時、ふと藤崎課長の視線を感じた。
「?」
視線の意味がわからなくて首を傾げて見上げると、藤崎課長はにこっと笑った。
「飯でも行かない?」
「エッ……?」
まさかそんなことを言われるとは思わなくて、絶句してしまった。
食事なんて……。そんな、困る。
「こんな時間まで何も食ってなかったからさ、腹、減ったでしょ?」
「それは、あの、えっと、……遠慮しておきます」
私が断ると思っていなかったのか、藤崎課長は目を大きく開いた。
「あ……、やっぱりイヤ、だよね?」
嫌というわけではない。でも、男の人と二人で食事なんて……。
「その、嫌というわけでは……」
「いや、ごめん。俺が悪かったよ。こんなオッサンと二人で飯なんて、そりゃあイヤだよね」
「い、いえ!そういうつもりでは……」
「ううん、いいんだ、ごめんごめん。俺が無神経だった」
「……」
そんな風に言われると申し訳ない気持ちになってしまう。そういうつもりじゃないのに……。
どうしよう、行った方がいいのかな。
藤崎課長を見上げると、少し寂しそうな横顔に見えた。
もしかして私、藤崎課長のこと傷つけてしまったのかな?
どうしよう……。