残業しないで帰りなさい!
「たとえ見た目が王子様でもさ、競馬、パチンコ、雀荘でしょ?完全にオッサンじゃん」
「それは学生の頃の話だってば!今は違うみたいだし」
「わかんないよー?そんなこと言って、競馬新聞片手に朝から新装開店のパチンコ屋に並んでる、しょーもないオッサンの一人かもしれないよー」
「……」
新聞を片手にパチンコ屋さんに並ぶ課長の姿。想像したら、ちょっと笑えた。
「香奈、今まで手のかからない子だったけど、そんなオッサンに恋しちゃったなんて、急に手がかかりそうだね」
「恋じゃないし、オッサンじゃないもん」
私がふくれると、瑞穂は今度は大きくカットされたバナナにフォークをブスッと刺して口に運んだ。そしてまた、もっさもっさと口を動かしながらじっと私を見据える。
なんでさっきからモリモリ食べる時に限って私をじっと見るの!?
「まあ、香奈が自覚してなくても、向こうは香奈のことを好きって明確に意思表示してきてるよね。もう告白してきたも同然じゃん」
苺を取ろうと動かした手が思わず止まった。目を大きく開けて瑞穂を見つめる。
「え?……ええっ!何言ってんの!そんなことないよ!」
「『君は特別』、『君のこと考えてた』、『君のことがずっと気になってた』なんてさあ。もうあと残ってる台詞なんて『君のことが好き』くらいしかないじゃん!」
そういう台詞ばかりを思い出すと、確かにドキドキするけど……。