嫌われ者に恋をしました*エピソードplus

 いつの間に買ってきてくれたんだろう。本当に嬉しい。

「ありがとう……。あの、でもごめんなさい。私、プレゼントなんて何も用意してなくて」

「いいんだよ。雪菜がいてくれる今日という日が最高のプレゼントだからね」

 隼人さん、そんな台詞は嬉しいけれど、どうしたの?絶対に何か企んでいますよね?

 うーん……。

 まあ、いっか。

 今日は私にも大仕事が待っているのです。

 プレゼントの謎はひとまず置いておいて、簡単に朝食を済ませると、お昼に向けて台所に立ち、拳をぎゅっと握って気合いを入れた。

 なぜなら今日は、お肉屋さんで勇気を出して買ってきた仔羊の塊肉を調理するのです。

 ドイツではイースターに羊のお肉を食べる風習がある。せっかくドイツに住んでいるわけだし、チャレンジしてみることにしたのだ。

 レベッカさんにもらったレシピで作ろうと、いろいろな材料を買ってきたけれど、このレシピ、ちょっと量が多い気がする。また二人じゃ食べきれないってオチになりそう。

 まずはずっしりと重い仔羊の塊肉をまな板にドーンと乗せ、ナイフをブシブシと突き刺して穴を開けていく。

「雪菜……そんなに突き刺して、何かストレスでもある?」

「違いますっ!」

 もう!隼人さんったら!

「こうやって穴を開けた所にニンニクを差し込むんです」

「へえー」

 小さく切ったニンニクを隼人さんにも手伝ってもらって仔羊の塊肉に差し込んでいく。

「これは、……凄いのが出来そうだね」

「大きなお肉ですもんね」

「いやいや、そうじゃなくてさ。こんなにニンニク入れちゃうなんて、これって間違いなくスタミナ料理だよね?雪菜……、今晩はそういうことだと思っておいて間違いないよね?」

 うーん、隼人さんが昼間からこんな発言をするなんて。あのプレゼントの中身、間違いなく夜系の何かですよね?

「そういうつもりじゃありません!ニンニクは臭み消しのために入れるんです!」

「えー?ふーん。でもそうは言っても、こんなの食べちゃったら、ねえ?」

 もう!まとわりついてニヤニヤしないっ!

 想像を膨らませて一人楽しむ隼人さんは放っておこう。

 仔羊の塊肉に塩胡椒を擦り込み、ローズマリー等のハーブを散らして、茹でたじゃが芋や人参も一緒に耐熱容器に入れてオーブンへ投入!

 あとは焼きあがるのを待つだけ。
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