嫌われ者に恋をしました*エピソードplus
私が首をかしげると、隼人さんは優しい瞳で私を見た。
「いや……。最初はね、雪菜をドイツなんて遠い国の違う環境に連れて行って大丈夫かなって心配してたんだ。でも、思いのほか雪菜はドイツの生活を楽しんでるからさ。本当に良かったよ」
隼人さん、心配してくれていたんですね?私のことを気にしてくれていたなんて、とっても嬉しいのです。
「私、ドイツに連れて来てもらって本当に良かったです。見るもの聞くもの初めてなものばかりで楽しいし!」
「そう?」
「はい!それに新しい友達もできて、知らない文化に触れて、いろんなことを考えて、少しは成長できたと思います」
「……うん」
「でも、それは隼人さんが一緒にいてくれたからですよ?だから私、隼人さんには本当に感謝しているんです」
隼人さんは繋いだ手を強く握った。
「俺の方こそ、雪菜には感謝してる。最初、自分でも気付かないフリをしていたけど、初めての海外でうまくやれるか、心のどこかで自信がなかったんだ。でも雪菜はいつも笑顔で俺の帰りを待っていて、俺のつまらない会社の話を聞いてくれた。思ったこともちゃんと言ってくれた。雪菜はいつも俺に寄り添って、俺の味方でいてくれたんだ。それがどれほど支えになったか……。本当に、ありがとう」
そうだったの?
私、隼人さんが話してくれる会社の話を聞くのは楽しかった。隼人さんが今何をしているのかわかるし、隼人さんの気持ちが聞けるから。
それに……。
「味方でいるなんて、そんなの当たり前のことですよ?私は何があっても、隼人さんが世界中の全員から嫌われても、隼人さんの味方なんですから」
「うん……、ありがとう」
「じゃあ、お互いにありがとう、ですね?」
繋いだ手を握り直して顔を見合わせて微笑んだら、だいぶ日が傾いたことに気が付いて、私たちは公園を後にした。
少しお散歩をしたとはいえ、家に帰ってからもまだまだお腹は空くわけもなく。
結局夕食は、軽くパンを食べる程度で終わらせた。
そして外は真っ暗になり、とうとう夜がやってきた。