嫌われ者に恋をしました*エピソードplus

 必死になって息を潜めているのに、隼人さんが指先で刺繍をなぞりながらプニプニ押してくるから思わず吐息が漏れてしまう。

「……んっ」

 慌てて息を止める私を見てニヤリとする隼人さん。

「我慢してるの?我慢しないで」

「だって……」

 困惑する私を意地悪く見つめながら、隼人さんは今度は大きな手でやんわりと、でもじっとりと持ち上げるように胸を包み込んだ。

 息を止めてもビクッと肩が跳ねる。

「生地薄いなあ。いい感触。……あ、生地の感触じゃなくて雪菜の胸の感触ね」

 そんなの、どっちでもいいのです。そんなことより、包み込んだまま指先を這わせないで……。そんなにされたらゾクゾク背筋が痺れてわけがわからなくなる。

 目をギュッと閉じても我慢できなくて、肩を縮めて小さく仰け反ったら吐息が漏れた。

「……可愛い」

 フッと笑った息が頬に届いた次の瞬間、柔らかく唇が重なった。

 少し離れてまた重なる。わずかに湿って吸い付くような感触。

 優しくて、柔らかくて、大好きな感触。

 キスって不思議……。

 何度も柔らかくキスを繰り返していたら、こわばっていた肩や背筋から力が抜けて、甘い痺れだけが体のあちこちに残されていく。

 そしてため息も甘くなった頃、ふと胸元に肌寒さを感じた。

「?」

 下を向くと、片方だけぽろりと胸が露出している!

 やだっ!いつの間にブラ、下げたの!?

「おー!この光景、たまんないね」

 ダメ!見ちゃダメ!片方だけってなんだかすごく恥ずかしい。

 急いでブラを上げようしたら、ぐっと手首を掴まれ、そのまま万歳の姿勢でトサッと枕に押し付けられた。

 ニヤリと見つめる隼人さんの視線に首を振る。

「やあ……見ちゃだめぇ」

「そのセリフ、そそられるなー。わざと言ってるの?」

「違う……」

 隼人さんったら、クククとか笑ってどうするつもり?

 完全に意地悪王子のスイッチ入ってますよね?爽やか王子はいったいどこへ行ったの?
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