嫌われ者に恋をしました*エピソードplus
「体の負担を考えると、雪菜には一足先に日本に戻ってもらって、日本で出産する方がいいんじゃないかな」
「そう、ですね……」
いいのはわかっているけれど、やっぱり寂しい。
でも、隼人さんも4月には日本に戻れるみたいだし、離れている期間はそれほど長くはなさそう。
それなら大丈夫……かな?
隼人さん、一足先って何月頃を想定しているのかな?
あんまり早く私一人を日本に戻されるのは寂しい……。
そんなことをつらつらと考えていたら、隼人さんがポツリと呟くように言った。
「本当はね、こっちで産んでもらって、一緒に戻るつもりでいたんだ」
「えっ?」
そうなの?
それならそれで、私は構わないのに。
見上げると、少し寂しそうな優しい微笑みがあった。
「ひとときだって雪菜と離れたくないからね」
迷いのない隼人さんの声がじわっと沁みて、胸がじんっと痺れた。
照れたように目をそらす隼人さんの仕草もいとおしくてくすぐったい。
「母親には『俺がサポートするから問題ない!』って突っぱね続けてた」
「……じゃあ、どうして?」
「『雪菜さんに何かあったらどうするの!何かあってからじゃ遅いのよ!』って言われてね。気が付いたんだ」
言葉を区切って、隼人さんは焦点の合わない遠い目をした。
「子どもを産むのは大変なことで、命の危険だってある。産んでからしばらくは体も弱っていると思う。それなのに、俺のそばにいてほしい、だなんて。身勝手な考えだって気が付いたんだ。自分の気持ちを優先して、雪菜を守ることを考えていなかったってね」
「そんなこと……」
隼人さんがそばにいてほしいと思ってくれるだけで私は幸せに包まれて、それだけで充分守られているのに。
「何よりも雪菜が大切なんだ」
噛み締めるようなその言葉にまた胸がキュンと震えた。