嫌われ者に恋をしました*エピソードplus
結局、電気を消してもらって一緒にそっとバスタブに浸かった。溜めたお湯の量はそんなに多くなかったのに、一緒に入ったら溢れてしまいそうでドキドキする。
でも本当はそんなことより、後ろから抱き締められてお湯に浸かっていることの方がすごくドキドキする。
少しずつ暗闇に目が慣れてきたら、本当にお湯がバスタブの縁ギリギリなことに気がついた。これはちょっとでも動いたら溢れちゃいそう。
でも、久しぶりにお湯に浸かったら、すごく気持ち良かった。やっぱり、お湯に浸かるのっていいな。
「やっぱり、シャワーだけだと物足りないからさ」
「はい」
「たまにお湯に浸かりたくなるんだ」
「そうですね。やっぱりお湯に浸かるのって気持ちいいですね」
「だろー?」
隼人さんは私の頭に顎を乗せてクスクス笑った。振動が伝わってきてくすぐったい。
「あのさ、雪菜。聞きたいことがあるんだけど」
「はい?」
なんだろう、ちょっと改まった感じ……。
「……雪菜は、子ども、欲しい?」
そう聞かれて一瞬息を止めてしまった。
子ども……。それについては、私の中に躊躇している私がいる。
もうここで即答しなかった時点で、私の中に迷いがあることに、隼人さんは気がついたんだろうな。
「今すぐには欲しくないかな?」
「……そう、ですね」
「まあ、まだドイツに来て間もないし、落ち着かないからね」
「はい……」
「日本に戻ってからでも、いいと思うし」
「……」
やっぱり隼人さん、私の迷いに気がついて気遣ってくれてる。……優しい人。
「それにさ……」
「?」
急に隼人さんは言葉を切った。なんだろう?