嫌われ者に恋をしました*エピソードplus

「雪菜は、前とは比べ物にならないくらい人と関わるようになったし、よく喋って、よく笑うようになったと思う」

 肩を包む隼人さんの手に、少し力が入った。

「出会った頃を思えば、本当にすごいことだよ。それは、雪菜が自分と真摯に向き合って、考えて、行動した結果なんだと思う」

 それは、隼人さんがそばにいてくれたから、だよ?

「ただ、それは俺や一部の人間が対象なのであって、やっぱり雪菜はできるだけ人との関わりを避けたい、と考えているんじゃないのかな」

 それは……。その通り、だと思う。

 確かに私は変わった。
 隼人さんと一緒にいると、声を出して笑ったり、自由に生きていると感じたりして、表情を出さないようにしていた頃とは全然違う。

 でもそれは、そばにいるのが隼人さんだから。
 心からの愛情を感じて、心から信頼できる人だから。

 花ちゃんやミノリちゃんだってそう。
 信頼している友達だから。

 よく知っていて、どう接したらいいのか、わかっている人なら、何も不安はない。

 でも、接し方のわからない人は、私をどう思うかわからない。
 気がつかない内に何か失敗をして、存在を否定されることが怖い。
 だから、よく知らない人との関わりは、やっぱり避けたい。
 無意識に避けるようにしているのかもしれない。

 でも……。
 それって、いけないこと、なのかな?

「みんな、そういうもの、なのではないでしょうか?」

 隼人さんは少し眉をあげて、驚いた顔をした。

「そうかもしれないけど、でも、程度ってものがあるよね?」

 程度?

「もちろん、誰もが分け隔てなく仲がいいわけではないし、誰だって避けたい人間関係は必ずある。でも、雪菜の避け方は、やっぱり普通じゃないと思う」

「……」

 普通じゃない、と言われてしまった……。
 確かに、常識のない私には、普通になんてできないのかもしれないけど。
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