嫌われ者に恋をしました*エピソードplus

「雪菜は迷惑だからって言うけれど、本当はその先が気になっているんじゃないのかな。迷惑をかけたら非難される、嫌われる。そんな思いをするくらいなら、避けた方がいい、一人で何とかした方がマシ、とかさ」

「……」

 どうしてこの人は、そんなことまでわかってしまうのだろう。
 もう、その通り過ぎて、困った顔をすることしかできない。

「でも、迷惑ってね、かけてもいいんだ」

「えっ?」

 隼人さんとの関係性で言えば、そうかもしれない。
 でも、お母さんたちは違うのでは?
 迷惑なんて、かけちゃいけないもの、では?

 目が合った途端、隼人さんは肩をすくめていたずらっぽく微笑んだ。

「だってさ、俺たちは家族なんだから。俺はもちろん、母親だって、悠人だって、雪菜の家族なんだよ」

「か、ぞく……」

 家族、と言われたら、急に考えが進まなくなった。口が重くて、ろれつが回らない。

「雪菜にとっての家族は、俺の思う家族とは全然違ったと思う。でも、今の雪菜なら、いろんな家族の形があることは、もうわかっているよね?」

 そう。
 家族の形なんて、本当にそれぞれで、同じ形なんて一つもない。

「うちの家族は、あんな感じだよ。遠慮もいらないし、迷惑をかけたっていい。迷惑をかけたって非難されたり、嫌われることもない。……まあ、アイツらは無神経で俺たちとは確かに違うけど、あれはあれで、俺たちの延長にある家族なんだ」

 そっか。
 私、ちょっと勘違いしてたかも。
 家族って、隼人さんと私と子ども、だけじゃないのね?
 お母さんや悠人さんもまた、私たちの家族、なんだ。

 考えてみたら、当たり前のことだったのかも。

 私って本当に常識がないから気がつかなかったけれど、お母さんをお母さんと呼ぶのは、家族だから。悠人さんだって年上だけど、私の弟にあたるわけで。

 それに、隼人さんが言った、延長にある家族っていう表現も、わかりやすかった。
 私たちとは違う雰囲気のお母さんたちも、私たちの延長にある家族、なんだ。
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