嫌われ者に恋をしました*エピソードplus

 ……どのくらい寝ていたのかな。
 いつのまにか眠ってしまった。

 焦点が合わないまま、ぼんやり目を開ける。

 もう、朝になっちゃった?
 暗いから、まだ夜かな?

 頭の中が怖いくらい静かで、音が消えたみたい。

 なんだろう、この感じ……。

 私の中にさっきの答えが出ているのを感じた。
 ぐっすり眠っただけなのに、不思議な感覚。

 隼人さんは、私が自分の存在を軽視する傾向があるって言ってた。
 あの時感じた、胸の痛みの理由。

 私は、人と関わるくらいなら、多少無理をしてでも避けたい、と思っている。
 やっぱり、人と関わるのは、まだまだ苦手なんだと思う。

 人と関わるくらいなら、ちょっと大変でも一人でいる方がマシ。
 それはもう、隼人さんの予想通りなのです。

 そんなことだから、あの婦人会的な何かで斉藤支部長の奥様にいじめられた時も、一人の方が楽!なんて考えて、私は気がつきもしなかった。

 隼人さんの言う、自分の存在を軽視するって、たぶん、気軽に無理をするとか、そういう意味なんだと思う。
 それは、私が私自身に対して強いる無理なら、まだいいのかもしれない。

 でも。
 今、私のお腹には赤ちゃんがいる。
 隼人さんとの間に授かった、大切な大切な命。

 私が無理をすれば、赤ちゃんにも影響がある。
 私はそれをわかっていたはずなのに。
 わかっていたのに、私は無理をしようとした。

「はあ……」

 ため息をつく。
 なんか、落ち込んじゃう。

 カチャッ。
 音がした方に視線を向ける。

 扉が開いて光が射し込んだら、隼人さんが姿を見せた。
 開いた扉の隙間から、わずかにスープの香りが漂う。
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