嫌われ者に恋をしました*エピソードplus
「私……、お母さんと同じなのかもしれません」
んっ?と隼人さんは首を傾げた。
「うちの母親?」
「いえ、私のお母さんです」
「……雪菜の、お母さん?」
隼人さんが目を細めたから、少し緊張する。
「あの、……私のお母さんは、私のこと、自分の所有物みたいに勝手にしていいって考えていたと思うんです。だから、平気で私を叩いたり、酷いことを言えたんだと思います」
「……うん、前にも言ってたね」
「はい。だから私、そうならないようにしようって、心に決めていたんです。それなのに私、自分の都合でお腹の赤ちゃんに無理をさせようとしていたから……」
「だから、同じだって思った?」
「はい……」
見上げると、隼人さんは少し真剣な顔をした。
スッと伸びてきた指が、そっと私の頬に触れて輪郭をなぞる。
「そんな風に考えてる時点で、雪菜と雪菜のお母さんは既に違う。雪菜はそうやって振り返って、ちゃんと自分と向き合って、考えている。だから、雪菜はお母さんと同じじゃない」
確信を持った響く声。
「雪菜は自分でもわかっているはずだよ」
わかっている?
……そう、かも。
前にもこんな話をした気がする。
私はお母さんとは違う。
私は私。
私には私の人生がある。
そして、お互いに相手が自分のことを振り返ることができなくなっていたら、ちゃんと言おうねって、隼人さんと約束した。
もしかして、あの時の約束、おぼえていてくれたの?
私が自分を見失っていたから言ってくれたの?
「そんなに悩まなくていいはずだろ?」
「……はい」
フッと口元が緩んだ。
そうだよね。
こうやって振り返って、気がついたら修正すればいい。
私には隼人さんがいてくれる。
自分を見失って、心が追い詰められたら、気がつかせてくれて、一緒に寄り添って考えてくれる。