嫌われ者に恋をしました*エピソードplus

 隼人さんが作った梅干しのお粥は、本当に美味しかった。
 酸味と塩加減も絶妙です。

 梅干しの味。
 歯がゆいような懐かしい味。
 急に日本が恋しくなる。

 スプーンを口へ運ぼうとした時、ふと隼人さんと目があった。
 黒い瞳にわずかな揺らぎを感じてハッとした。

 隼人さんだって、私のつわりの状況がわからなくて、本当は不安なんだと思う。
 それなのに、こんなに落ち着いて、冷静に私を支えてくれる。

 私、あなたが旦那様で本当に良かった。
 あなたにはとても敵わないけれど、それでも私もあなたを支えたい。

 だから、思いっきり微笑んで見せた。

「すっごく美味しいです」

「だろー?」

 私が笑うとあなたも笑う。
 あなたの笑顔は私の幸せ。

 隼人さんのこと、お腹の赤ちゃんのこと、自分自身のこと。
 私たちを取り巻く状況をもう一度よく考えてみても、やっぱり日本に戻って出産するのが一番いいのかもしれない。

 こうして微笑み合うことができないのは寂しいけれど、少しの期間だもの。
 離れていても、心はいつもあなたのそばにいる。
 少しくらい離れても私たちは大丈夫。

 物理的に離れても大丈夫なくらい、私も強くなれたと思うから。

 だから、その後二人でよく話し合って、私は日本に戻って出産することに決めた。
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