嫌われ者に恋をしました*エピソードplus

「もし、子どもが出来たら……雪菜を独占できなくなるから、ちょっと面白くないかも」

「えっ?」

 隼人さん……、自分の子どもにまでヤキモチを妬いちゃうの?

「なんて言うのかな、もうちょっとだけ二人きりでいたいな、なんて思ったりもする」

 でも、それはちょっとわかる。だって、まだ知り合って1年しか経ってないもの。

「それは、私も思います」

「そう?」

「はい」

 隼人さんは私の腕を撫でた。チャポンとお湯に触れる音がする。

「それに、産むのは雪菜だからね。きっと体に負担だってかかるだろうし、それが少し怖いと思う気持ちもあるよ。だから、雪菜が欲しいと思った時でいいと思う」

「……はい」

 そんな風に私の体を気遣ってくれるなんて、本当にこの人は優しい夫。こんな人に抱き締められているなんて、私は幸せ。

 ……せっかくそう思ったのに。

「だって、このお腹がどんどん大きくなるんだよ?」

 そんなことを囁くように言いながら、隼人さんは私の脇腹からおへそにかけて指でスウッとなぞった。くすぐったくて、思わずビクッと動いてしまい、少しお湯が溢れた音が聞こえた。

「だ、だめですよ。動いたらお湯が溢れちゃう」

「雪菜が動かなければいいんだよ」

 ええ?そんなの無理……。この人、やっぱり意地悪王子だ。

「あっ、だから、ダメですって」

 ダメって言えば言うほど、追いかけるようにそっと触れてくる長い指。
< 13 / 134 >

この作品をシェア

pagetop