嫌われ者に恋をしました*エピソードplus
そんな2回目の婦人会的な何かに参加した数日後のこと。
いつもなら、帰ってきた隼人さんがベルを鳴らすから私が玄関の扉を開けるのに、隼人さんは自分で鍵を開けて家の中に入ってきた。
どうしたのかな?ちょっと機嫌が悪いみたいだけど、何かあったの?
「おかえりなさい」
「……」
「?」
どうして何も答えてくれないの?こんなの、初めて。急激に不安になる。
鞄を置いて、いつも通りベッドルームのクローゼットの前で着替える隼人さんの後ろ姿を、部屋の入り口からじっと見つめる。
なんで機嫌が悪いの?何があったの?
もしかして、機嫌が悪いの、私のせい?何か気に障ることしちゃった?
考えても考えても、全然原因がわからない。どうしたの?って聞きたいけど、なかなか一歩が踏み出せない。
隼人さんも私がずっと後ろから見てるって気がついてるくせに、どうして何も言ってくれないの?
こんなのイヤ。どんどん不安が大きくなってドキドキして気持ちが悪い。
隼人さんは着替え終わるとそのままスタスタと私を無視して横を通りすぎ、洗面所に行って手を洗い始めた。
私のこと、無視してる!
どうして?わけがわからない。何がいけなかったの?
もう、私のこと、嫌いになっちゃったの?もしかして、他に、好きな人ができたの?もう、私はいらないの?
そう思ったら、ゾッと痺れるような寒気がした。
隼人さんに嫌われるなんて、耐えられない。隼人さんに捨てられたら、私には何もない。私には隼人さんだけなのに。
じわっと涙がわいて、唇をぎゅっと結んだ。
隼人さんは手を洗ってリビングに戻ると、何も言わずに窓際に立って外を見た。
私はどうしたらいいのかわからなくて、立ち尽くしたまま、隼人さんの後ろ姿をじっと見つめていた。