嫌われ者に恋をしました*エピソードplus

「雪菜がこんなに怒るなんて、珍しいね」

「だって、すごく嫌だったのです。隼人さん、もう無視なんかしないって約束してください」

 本当に辛かったんだから!

「わかった、ごめん。俺が大人げなかった」

 そうやって優しい瞳で見下ろして髪を撫でられたら、すぐに許してしまう。でも、ここは一つ釘を刺しておこう。

「約束ですよ。自分がされて嫌なことを人にしてはいけないのです」

「うん……そうだね。雪菜に無視されたら、俺も死んでしまうよ」

 隼人さんの胸に頬を寄せてうなずいた。

 目を閉じたら、抱き締められて包まれている感触にため息が出た。

 隼人さんの腕の中、すごく幸せ。隼人さんが私のことを嫌いになっていなくて、良かった。……本当に良かった。

 隼人さんは私の髪を撫でながら聞いてきた。

「結局、そのオバサンたちに何をされたの?」

「何って……、洗い物と掃除をしてって言われたからやっただけですけど」

「それだけじゃないだろ?」

「洗い物と掃除をしてる間にお食事が終わってしまっただけです」

「それは……普通いじめられてるって気がつくんじゃないのかな?」

 抱き締められてるから見えないけど、きっと隼人さん、目を細めてる。

「だって……、奥様たちの会話に入るより一人の方が楽、なんて思ったり、お食事は終わっちゃったけど、そんなものかなって思ったりして。本当に全然気がつきませんでした……」

「なんか、まあ、雪菜らしいかもね」

 見上げると目が合った。顔を見合わせてフフッと笑う。

「もう、次の集まりには行きません」

「そうすべきだね。そういえば、阿久津さんの奥さんもあの会、行きたくないんだって。暇なら遊んでやってくださいって阿久津さんが言ってたよ」

「そうですか……」

 あの綺麗な人が?遊んでやってくださいなんて、こちらの台詞です。
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