嫌われ者に恋をしました*エピソードplus
(3)ドイツの友人
阿久津課長の奥様からの連絡は、意外と早く来た。
会ってみて初めて分かったけれど、しっとりした美人の阿久津課長夫人は、見た目と性格が全然伴わない人だった。特に喋り方。あまりにもフレンドリーだったから……。
「雪菜、アタシのことは花って呼んで」
初めて会った時、開口一番でいきなりそう言われた。初対面でいきなり雪菜って言われた!私がオロオロしていると、阿久津課長夫人はズイッと顔を寄せてきた。
「アタシ、堅っ苦しいの嫌いなんだよ」
「はあ……、それなら『花ちゃん』っていうのはいかがでしょう?」
「ちょっとお!敬語もなしだよっ!敬語で喋ったら罰金ね。敬語喋ったら……そうね、カリーブルスト奢りだかんね」
「わ、わかった……」
罰金とか言って、敬語を喋る可能性があるのは私だけなんじゃないのかな?
やりにくい……。非常にやりにくい。あまり出会ったことのないタイプの人。
勢いがあるところはミノリちゃんと似ているけれど、花ちゃんはミノリちゃんと違って一気に踏み込んで近付いてくる感じがする。
最初はとにかくオドオドしてしまった。いきなりタメ口で喋るのも慣れないし。そんな私の挙動不審な雰囲気は全く気にすることなく喋り続ける花ちゃん。
悪い人じゃないんだけど。むしろフレンドリーでいい人だと思うけど。
でも、何度か会っているうちに少しずつ慣れてきた。
花ちゃんは私より二つ年上。年もそれなりに近いし、だんだん話も合ってきて、花ちゃんと過ごす時間は私にとって本当に楽しい時間に変化していった。