嫌われ者に恋をしました*エピソードplus

「アタシってさあ、筋金入りのダメ男好きなんだよねえ」

 芝生に足をバタバタさせながら、花ちゃんは突然楽しそうにダメ男好きの話を始めた。

 花ちゃん、なぜ楽しそうに自分のダメ男好きの話なんてするの?それって不健康自慢みたいなもの?

「花ちゃん、それじゃあ阿久津課長がダメ男みたいに聞こえちゃうよ?」

「あははっ!阿久津もダメ男だよっ」

 花ちゃんは旦那様の阿久津課長のことを名字で『阿久津』と呼ぶ。

 旦那様を名字で呼ぶのって、なんかちょっと憧れてしまう。私の場合だと隼人さんのことを『うちの松田は』とか言うってことになるわけで。

 でも、自分がそう言ってる姿を想像しても、いまいちしっくりこないと言うか、ちょっと照れくさい気がしてしまう。

 やっぱり私は『主人』でいいかな。本当はそれだって、ちょっとドキドキしながら言ってるくらいだもの。

「阿久津課長、全然ダメ男には見えないよ?」

「まあ、最近はだいぶ良くなったかなっ。それに今まで出会ってきたダメ男の中では一番マシだったんだよねえ」

 今まで出会ってきた?花ちゃん、そんなにたくさんのダメ男と出会ってきたの?

 そもそも、ダメ男って何?ダメな男?甲斐性なし?ヒモ?夢ばかりを追いかける男?

「……花ちゃん、どんな人のことをダメ男って言うの?」

 花ちゃんは目を丸くして驚愕の顔をした。

「エーッ!?なにそれ?アタシ、てっきり雪菜もダメ男好きなんだと思ってたけど、違うの?同じ匂いを感じたんだけどなあ……」

 ええっ?私、ダメ男好きに見えるの?

 花ちゃん、それは聞き捨てなりません!だってそれじゃあ、隼人さんがダメ男みたいじゃない!全然違うもん!そんなことないもん!
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