嫌われ者に恋をしました*エピソードplus
私の不安そうな顔を見て、花ちゃんはニコッと笑った。
「最悪でしょー?あの時はさ、母親の言うことに阿久津も賛同しちゃうんじゃないかなって、アタシも内心不安だったんだけどねえ」
「違ったの?」
「うん。阿久津がね、お義母さんに言ったの。『テレビで専門家が何を言ってるかは知らないけど、そんな風に一括りにできることじゃない。親と同じ道を進む人もいるかもしれないけど、進まない人もいると思う。彼女と父親は別の人間で同じじゃない。たとえどんな環境に育ったとしても、誰の子であったとしても、この人は今と同じように優しい子になったと思う。それがこの人だから。だから、俺はこの人と結婚したいんだ』って」
なんか、ちょっとウルウル涙が滲んじゃった……。阿久津課長、やるなー!
「阿久津課長、素敵っ!」
「でっしょー!だからね、阿久津はアタシの白馬に乗った王子様なんだ」
「そっかー」
そうだよね?それはそうだよね?そんな素敵な人、王子様だよね?
私にとっても隼人さんは王子様だけど……。隼人さんはどう思うのかな?私のこと、暴力的じゃないって言ってくれるけど。
お母さんと私のこと、どう思ってるの?……やっぱり一度ちゃんとお話ししようかな。
「雪菜は子ども作るのが怖いの?」
「うん……、お母さんと同じことしちゃうんじゃないかって、怖いの」
「えー?どうしてそんなこと思うの?育ちなんて関係ないよ?雪菜とお母さんは違う人間だもん。アタシ、雪菜は絶対にいいお母さんになると思う。お母さんに向いてるもん」
花ちゃんはニコニコしてそう言った。花ちゃんの「いいお母さんになる」って言葉は、不思議と胸に深く沁み込んだような気がした。