嫌われ者に恋をしました*エピソードplus

 隼人さんはいつも家に帰って来るとお仕事の話をしてくれる。今日はご飯を食べながら流通改革の骨子となるネットワーク再構築案が重役会議で通ったことを嬉しそうに話してくれた。

 向かい合って座って話をするこの時間も本当に幸せ。

 隼人さんがこんな風に生き生きと目を輝かせて話してくれることが嬉しい。ついうっとり見蕩れてしまう。

 だって、会社では冷たい部長なんでしょう?でも、それでいいの。むしろ、冷たいままでいてほしい。こんな風に生き生きした姿の隼人さんは私だけが知っているんだもの。

 隼人さんは独占欲が強いけれど、私だって同じ。私もずっとあなたを独り占めしていたい。

 ご飯を食べ終わってお片付けが終わったら、隼人さんはテレビをつけた。私は綺麗に拭いたテーブルに頬杖をつく。そして、ため息をついて目を閉じてじっと考えた。

 花ちゃんと話していた時は隼人さんと早く話したい、なんて思ったけれど。いざ話すとなると、どうやって話したらいいのかわからなくなってしまった。

 隼人さん、やっぱり子どもほしい?
 私、子どもを作るのが怖いの。
 お母さんと同じことしちゃいそうで怖いの。
 それも、知らない内にしていそうで怖いの。
 自分に自信なんて持てない。
 漠然と何かが怖い。
 私、臆病だよね。
 どうしたらいいのかな。

「……菜?雪菜?」

 隼人さんの声にハッとして目を開けた。もしかして何回か呼んでた?

「雪菜、どうかした?」

「い、いえ……」

 いつの間にか隼人さんは、テーブルに向かい合わせに座って心配そうにじっと見つめていた。

「何かあった?」

「いえ……そういうわけではないんですけど」

「でも何か悩んでる」

「えーっと……」

 どうやって話すか、何も考えがまとまっていないのに、どうしよう。

 そうだ!とりあえず、今日花ちゃんと会った話をしよう!
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