嫌われ者に恋をしました*エピソードplus

「納得できてないって顔してる」

「……納得できないわけではないんですけど」

「じゃあ、何?」

「なんて言うか、……漠然と不安なんです」

 そんなの変だよね?漠然となんて。でも、自分でも何が不安なのかよくわからない。

「雪菜はお母さんとは違う。性格も違うし、今の環境だって違う。子どもの頃、雪菜が叩かれていたからって、雪菜にとってそれが当たり前のことになっていて、人を叩いていいと思っているとも思えないし、むしろ雪菜は人の痛みを想像してしまうタイプだと思う。だから、俺は雪菜は暴力的だとは思わないよ」

「うーん……」

 隼人さんは、とっても丁寧に理路整然と説明してくれた。でも、せっかく説明してくれたのに申し訳ないけど、どういうわけかストンと落ちない。

「……でも私、自分のことは叩いてました」

 隼人さんの視線が少し鋭くなったような気がした。

「今も?」

「いえ!今は叩いてません」

 今は本当に叩いていない。不思議な感覚だけど、私自身が自分を叩く概念から外れつつあるような気がする。

「良かった」

 隼人さんは私の頬に当てた手を頭に乗せて、ほっとしたように優しく微笑んで撫でた。もしかして、今も叩いてるんじゃないかって心配してくれた?

「雪菜、これは前に雪菜を見ていて思った俺の勝手な感想だけど、雪菜がお母さんから叩かれていたことと、自分を叩いていたことは、全く関係ないとは言わないけど、それでも直接的には関係ないような気がするんだ」

「?」

 なんか、頭がこんがらがってちょっと意味がよくわからない。

 私が不思議そうに首を傾げたら、隼人さんは私の頭から手を離して両手を机の上に置いた。

「前にさ、スッとしてやめられないなんて煙草と似てるね、なんて話をしただろ?」

「はい」

「それって端的に言うと、中毒性のあるストレス解消方法なんだと思う」

「そう、ですね」
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