嫌われ者に恋をしました*エピソードplus

 叩くことで心の傷を具体的な痛みに変えることが本当にストレスの解消になるのか、自分ではわからない。

 お母さんが本当のところ、どうして叩いたのかもわからない。単に感情にまかせて動いていただけなのかもしれない。

 私が自分を叩くのは私が内向的だからだと思うけれど、結局何のために叩くのか、なぜスッとするのか、私には納得できる答えは見当たらない。

 でも、隼人さんに言うように心の内を表に出すことが意味があるのであれば、叩く代わりに言葉にすればいいのかもしれない。

 叩かなくても言葉にすれば心の傷を知ることができる。

 言葉にして表に出すこと。安心して言葉に出せる環境にあること。

 最近、私はよく話をしている。こうして話して言葉にしていることがいいのかもしれない。言葉にすると、不思議と客観的になれる。

 こうして隼人さんと話していても、話そうとして考えること自体が自分を冷静に見ようとするきっかけになっているのかもしれない。

 私は隼人さんと出会うまで、自分の話をほとんどしなかった。ミノリちゃんにもほとんど自分の話はしなかった。話しても仕方のないことだと思ってた。

 でも、隼人さんと出会って私をストンと全て受け入れてくれる存在を知った。隼人さんは自分の話をしてもいい人。自然といろんな話をできるようになった。

 今は隼人さんだけじゃなくて、ミノリちゃんにも花ちゃんにも、いろんな話をできるようになった。

 私は私のままでいい感覚。私は普通に当たり前に存在していてもいいという感覚。その感覚が自分を叩くことから離れた感覚に繋がっている気もする

「私にはお母さんと私の違いはまだよくわかりません。でも、私には隼人さんがいてくれて、私をそのまま受け止めてくれるから、もう自分を叩くことはないって思えます。だから、自分に向かっていた暴力が子どもに向くこともないのかもしれません」

 ここまではなんとなく納得できたような気がする。でも、どうしてだろう。なぜかあと一歩が踏み出せない。
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