嫌われ者に恋をしました*エピソードplus

 隼人さんは課長から部長に昇進した。それも改革部長なんて、いかにも嫌われそうな役職名をもらってドイツ支部に赴任した。毎日とても忙しそう。

 家に帰ってくると、隼人さんは会社のことをいろいろとお話してくれる。お話してくれると今どんなお仕事をしているのかがわかるから、とても嬉しい。隼人さんが何をしているのかわからないなんて、寂しいもの。

 隼人さんは流通面での見直しをしようとしているけれど、それより人員整理をすべきと考えている人もいるらしい。会社ではやっぱり嫌われてしまっているのかな。

 以前はすぐ目の前で仕事をしている課長な隼人さんを見ることができたのに、今は家に帰ってからの優しい旦那様な隼人さんしか見られない。だから、会社の隼人さんがどんな雰囲気でお仕事をしているのか気になってしまう。

 ……だいたい想像はつくけど。

 きっと、眼鏡の奥の冷たい瞳で周りを凍りつかせている。

 でも、隼人さんは冷たいんじゃなくて、誠実で冷静沈着なだけ。そんな隼人さんの良さをわかってくれる人が会社にいればいいのに。

 私のそんな小さな心配はすぐに払拭された。

 ドイツに来て1か月くらいが過ぎた頃、ドイツ人の重役の方からホームパーティーに奥様もご一緒にどうぞ、と誘われた。

 ええっ!ホームパーティー!!

 ホームパーティーなどというものに招待されるなんて考えてもいなくて、緊張してあれこれ妄想を膨らませて身構えていたら、隼人さんに笑われてしまった。
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