嫌われ者に恋をしました*エピソードplus
黙々と集中してニシンの骨抜きをしながら考えた。私はこの適当な花ちゃんから適当って言われたの……?
でも、適当って悪いことではないのかもしれない。いい加減な感じもするけれど、状況に応じてうまくやっているとも言えるし。花ちゃんなんて、まさにそう。
あんまり真面目に考えなくてもいいのかな。気楽に、適当に。
花ちゃんの言う通り、私はきっと変わり者だ。ずっと人と関わることを避けていたから、何でも自分の中で完結してしまって、人との関わり方がよくわからない。
最近、隼人さん以外の人と関わるようになったけれど、どんな関係が適度な関係なのかがわからなくて、人から自分がどう思われているのかがわからなくて、何でも完璧にしないといけないってどこかで思っていた。でも、そんなことしなくていいのかもしれない。
そんなことはしなくていいし、そもそも完璧になんてできていなかったと思う。
人と関わる時、相手の気持ちを考えるけれど、結局人の気持ちなんて完璧にはわからない。それは自分の想像の範疇を超えることはない。相手も私の考えを完璧にはわからない。
こんなことしてほしいのかな?こんなことをしたら嫌かな?こんな風に思ってるのかな?でもそれは、結局自分勝手な想像なのであって、本当かどうかはわからない。
相手と話すことで、その想像はある程度、本当のところと近くなっていくと思うけれど、完璧に相手の思うことを私が想像の中で再現することはできない。
人と人との関わりってそういう自分勝手な想像をお互いにし合うことなのかもしれない。違うからこそ、わからないからこそ、相手を知って自分の想像を現実に近づけようする。
それでも、自分勝手な思い込みで、相手のことを思ったつもりが余計なお節介になったり、やってくれると思ったことを相手はやってくれなかったりする。
私と隼人さんだって、思い込みですれ違うことがある。
だからこそ、言葉にすることは大事なのかもしれない。自分の思っていることは言わないと伝わらないし、相手の思っていることも話してもらわないとわからない。
隼人さんと一緒にいて、たくさんお話をしてそれはとても強く思う。
それとも、そんなの言わなくても普通はわかるものなの?
花ちゃんとレベッカさんのように、違う言語でもなんとなくわかり合えている様子を見ると、そんな気もしてしまう。