嫌われ者に恋をしました*エピソードplus
「あらあら、雪菜!」
レベッカさんの声が聞こえてハッとした。
考え事をしながら黙々と型抜きをしていたら人形型ばかり大量にできてしまった……。
「半分は食べる用で、あとの半分は飾り用にしましょうか」
にっこり笑ったレベッカさん。ああ、もう!うっかりしてました。ごめんなさい。
ペーパーを敷いたオーブン皿にレープクーヘンを並べて、焼く前に刷毛で一つ一つ丁寧に牛乳を塗る。予想通りだけど「めんどくさーい」と言う花ちゃん。
「これも愛情よ」
「はーい」
またしても会話が成り立つ二人。
焼く時間は短くて、10分ちょっとくらいで焼き上がった。
オーブンから出したレープクーヘンが熱いうちに、今度はハチミツを水で溶いたものを一つ一つ塗る。これを塗らないと固くなるらしい。食べる用にだけしっかり塗っていく。
うーん、これだけでも美味しそう。市販のクッキーとは違って、レベッカさんのレープクーヘンは上品な香りがする。
レープクーヘンが冷めたら、今度は白いアイシングで縁取りや模様を書いていく。レープクーヘンはかなり濃いめの茶色だから、白いアイシングがとてもよく映える。
袋の端を小さく切ってアイシングが細く絞り出せるようにするのは日本と同じやり方。
花ちゃんは一心不乱にハートのレープクーヘンにレース柄みたいな綺麗な縁取りを手際よく次々と書いている。花ちゃんって器用だし、こういう作業のセンスがあると思う。
私はお絵描きってあんまり得意じゃない。それでも人形のレープクーヘンに、目とにっこり笑った口を書いて、お腹にボタンを3つクルクルッと絞り出した。
じっと見つめる。なかなか可愛く書けたんじゃないのかな?
「雪菜。人形型、その1個だけじゃないのよ?たくさんあるんだから、よろしくね」
「はーい」
レベッカさんに笑って言われて、私は大きな声で返事をした。そうです。私はさっき人形型を作りすぎたのです。
それから黙々と顔を書き込んだり、縁取りを書いていたりして、あっという間に夕方になってしまった。