嫌われ者に恋をしました*エピソードplus

 帰ってきた隼人さんは、私の描いた人形型のレープクーヘンを見て、小さくぷっと笑った。

「あ!……笑いましたね?」

 描いた中では一番の自信作だったのに!

「い、いや……。とっても可愛いと思うよ」

「でも今、笑ったじゃないですか」

 私が少し口を尖らせると隼人さんは困ったように微笑んだ。

「本当に可愛いよ」

「嘘ばっかり!」

「ホント!一生懸命描いた感じで可愛らしい」

 それって努力賞ってこと?いいもんっ!どうせ私は絵心がないのです。

 手に持った人形型のレープクーヘンをじっと見つめて隼人さんがつぶやいた。

「もったいなくて食べられないな」

「じゃあ、それは飾り用にしましょうか?」

「雪菜が作ったのは全部もったいなくて食べられないよ」

 そんなことを言っていたら、人形型は全部飾り用になってしまう。

「もみの木が人形だらけになりますよ?」

「いいんじゃない?これ……ぷっ、可愛いし」

 むー!?また笑ったなー!

「もうっ!いいです!どうせ下手っぴだもん」

「本当に可愛いよ。これを雪菜が描いたと思うと、たまらなく可愛い」

 そう言いながら、隼人さんは私に近付いて、ぎゅうっと強く抱き締めた。そんなことをされるとつい嬉しくて身を任せてしまうけど、でもごまかされないもん。

「お世辞はもういいです!」

「そうじゃなくて、これを一生懸命描いた雪菜が可愛くてたまらないんだ」

 抱き締める腕に力をこめる隼人さん。思っていたのと違う台詞にキュンとしてしまう。

「クッキーは食べないけど、雪菜を食べたい」

「……え?」

 急に耳元でそんなこと囁かれたら、ゾクッとする。

 あの……隼人さん?帰ってきたばかりなのに何言ってるの?
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