嫌われ者に恋をしました*エピソードplus
そういえば。
私、隼人さんにお母さんの話をしようと思ってたんだ。
「……今日、花ちゃんとお母さんのことを話したんです」
「お母さんのこと?どんなこと?」
「どうしてお母さんは名前を変えないまま働いていたんだろうって。そうしたら花ちゃんに、誰かを待ってたんじゃないのって言われたんです」
「うーん、なるほどね」
「それで私……、もしかしたらお母さんはお父さんを待っていたのかもしれないって思ったんです」
「でも、お母さんはいろんな人と付き合ってたんだよね?」
「それは、そうなんですが……」
「いろんな人と付き合っていても、お母さんは心の中ではずっと雪菜のお父さんのことを好きだった?」
「本当にそうなのかはわからないんです。でも、あんな風に写真をとってあったのは、お父さんに見せるためだったんじゃないのかなって思って」
「そっか……」
隼人さんは少し考え込むような表情をして、私の額にキスをした。
「俺には雪菜のお母さんが考えてたことは正直全然わからない。隠すように写真をとったあったのはお母さんが雪菜を愛していたからだって思いたいし、そうだったんだと俺は思ってる」
「うーん……」
どうだろう。お母さんが私を愛していたのかは、私にはわからない。
愛していた、とか、愛していなかった、なんて言葉一言では片付けられない、もっとごちゃごちゃした感情なのかもしれない。
「私に対するお母さんの感情は一言では言い表せない複雑なものだったと思います。愛していたかもしれないし、邪魔だったし。あっ……、いえ、もしかしたら……」
急にふと言葉が浮かんだ。
「お母さんは……私に甘えていたのかもしれません」
「甘えていた?」
お母さんは私に甘えていた?自分で言った言葉なのに不思議な気持ちになった。喋りながらふと口から出てきた言葉。
お母さんが私に甘えていた、なんて考えには初めて思い至った。でも、よくよく考えてみたら、確かにそうだったのかもしれない。
甘えていたからこそ、平気で私に「産まなきゃ良かった」なんて言えたんじゃないのかな?甘えていたからこそ、叩くことができたんじゃないのかな?