嫌われ者に恋をしました＊エピソードplus

「雪菜？」

　見上げると隼人さんがじっと見つめていた。

「今、一人でいろいろ考えてたね？何考えてたの？」

「……お母さんのこと、考えてました」

「お母さんが雪菜に甘えてたこと？」

「その事も含めて、お母さんのことを考えていたら、自分が何を漠然と怖がっていたのか、わかったような気がするんです」

　隼人さんは何も言わずに私を抱き締めると、私の額に唇を寄せた。

「私、自分がお母さんと同じことをするんじゃないかって怖かったのは、お母さんが何を考えていたのか、わからなかったからだと思うんです」

「うん」

「でも、お母さんのこと、少しだけわかったような気がします。……お母さんは私に甘えていたっていうか、私を自分の好きにしていい物、自分の所有物みたいに思ってたんじゃないのかなって思うんです」

「なるほどね」

「お母さんにとって私は所有物だから、酷いことを言ったり、叩いたりしても平気だったのかもしれません」

「雪菜は、お母さんには愛されてなかったって思ってるの？」

　隼人さんは私がお母さんに愛されていてほしかったって望んでいるのかな。でもね、それはどうにもならないよ。

「……お母さんからは私を産んだせいで自分の人生が台無しになったって言われてきたから、私は存在してはいけないって思ってたし、いつもぞんざいに扱われて、私もお母さんを避けてきたから、愛されているかどうかなんて考えたこともなかったし、考えたくもありませんでした。でも……」

「でも？」

「お母さんはお父さんのことを好きだったのかもしれない。お母さんはお父さんに会って私の写真を一緒に見たかったのかもしれない。……お父さんがいなくなって、お母さんは私に『産まなきゃ良かった』なんて口癖みたいに言っていたけれど、本当はお母さんは好きな人の子どもを産みたくて産んだのかもしれない」

　私はお父さんと繋がっている唯一の存在だから、お母さんは私のことを捨てられなかったんじゃないのかな。