嫌われ者に恋をしました*エピソードplus
お母さんはお母さんなりの、私に対する自分勝手な愛情と言うか愛着を持っていたと思う。それは純粋に私に対して向いていた愛ではなく、私を通してお父さんに対する愛だったのかもしれないけど。
お母さんも自分の出口のない悩みに翻弄されていたのかもしれない。
「それはそれで勝手だし、あの状態を愛していたなんて思いたくないし認めたくもないけど、それでも、もしあれがお母さんの愛し方なんだとしたら、……私とお母さんは全然違うんだって思います」
「……うん」
「だから私、お母さんとは同じにはならないってハッキリとわかったような気がするんです。私とお母さんは全然違う。それでも自分に自信が持てなくなったら、時々自分を振り返ればいい。私は自分を振り返って考えることができる。私とお母さんはそこが違う。だから、大丈夫なんじゃないのかなって、そう思ったんです」
「そっか」
喋りながら、心の中でごちゃごちゃに絡まっていたものが四つ角綺麗に折りたたまれて、すらすらと言葉になって出てくるような不思議な感覚を覚えた。
私は隼人さんに話をしたかっただけじゃなくて、自分自身とも話をしたかったのかもしれない。
私はお母さんとは違う。
私は私。
初めて持った感覚。
私には私の人生があったんだ。
私はお母さんとは違う人間。私は隼人さんとも違う人間。私は誰とも違う、私は私。何にもどこにも属さないニュートラルな感覚。
……思いのほか、孤独な感覚。
でも、昔感じた取り残される孤独とは違う。孤独感というより心地よい独立感。
人は結局一人なんだ。
でも、私は大丈夫。
私には一緒に生きてくれる人がいる。支えてくれる人がいる。
「隼人さんにお願いがあるんです」
「なに?」
「私が自分を振り返ることも忘れて、身勝手なことをしていたら、言ってほしいんです」
「うん。それは俺も言ってほしい。遠慮しないでちゃんと言ってほしい」
隼人さんが前に言っていた通り、違う人間が一緒に生きていこうとすれば、いろんなことがあるのは当然なんだよね。
家族だって違う人間の集まり。
すれ違ってしまったり、ぶつかったり、甘えてみたり。それでも、いろんな出来事が起こる度にお互いのことを思いやって話し合って、一緒に生きていく。きっとそれが私なりの愛し方なんだと思う。
隼人さんにぎゅうっと抱き付いた。
「私、隼人さんを愛してる」
隼人さんは少し驚いたような反応をした。
「どうしたの?」
「どんなことがあっても、隼人さんとずっと一緒に生きていきたい」
「うん……俺もだよ。ずっと一緒にいよう」
隼人さんは私の頭を撫でて強く抱き締めた。この包まれる感じが大好き。
私はすごく幸せ。
あなたに出会えて、私は本当に幸せです。