嫌われ者に恋をしました*エピソードplus
第2章
(1)ドイツのクリスマス
ドイツでは、クリスマスイブにクリスマスツリーの飾り付けをして、年明けまでそのまま飾っておくらしい。
クリスマスイブは、家族で過ごすのが主流らしいけれど、ワイワイと楽しいことが大好きなシュルツさん夫妻は毎年自宅に人を招いてクリスマスパーティーをしているそうだ。
日本からドイツ支社に配属されると、だいたい2年から5年で日本に戻される。長いと10年なんて人もたまにいるけど。
サービス精神旺盛なシュルツさん夫妻は、在住期間の短い日本人にドイツ流のおもてなしをして、良い思い出を持って帰ってもらいたいんだと思う。
その一環なのか、レベッカさんは私と花ちゃんをクリスマスマルクトに連れて行ってくれた。
クリスマスマルクトとは、アドベント期間に開催される屋外マーケットで、クリスマス用の飾りや小物、お菓子を売る屋台が並ぶ。
ハンブルク市庁舎の前で開かれているクリスマスマルクトは、まるでおとぎの国に迷い混んでしまったような雰囲気だった。
たくさん並んだ小さな屋台は赤を基調とした色合いで、ツリーの緑がとても綺麗に映えている。ヴルスト(ソーセージ)を焼くいい匂いが漂い、グリューワイン(ホットワイン)の屋台も並ぶ。
空気を送って音を出すオルゴールのくぐもった音色がどこからともなく聞こえてきて、なんだかとっても楽しい気持ち。
屋台には電球の暖かい明かりが灯されて、色とりどりのお菓子やクリスマス飾りが所狭しと並べられている。
顔より大きなハート型のレープクーヘンが吊る下げられた屋台、兵隊さんの形をしたクルミ割り人形、楽器を持った天使の飾り、得体の知れない怖い顔の飾り……。
何もかもが目新しくて、見ているだけでワクワクして、あちこちキョロキョロしてしまう。
ふと、古めかしいメリーゴーランドが目に止まった。メリーゴーランドと言うより回転木馬と表現すべき?電飾に彩られ、ノスタルジックな色合いで、外国というよりファンタジー映画の世界に来てしまったような錯覚に陥る。