嫌われ者に恋をしました*エピソードplus

 買ってきた飾りの他に、この間作ったレープクーヘンも飾ろう、ということになり、下手な絵を笑われたお人形のレープクーヘンを恥ずかしながら並べてみた。

「このニヤッて笑ってるのは隼人さんです」

「じゃあ、このにっこり笑ってるのが雪菜」

 隼人さんが手に取ったレープクーヘンは、思いっきりにっこり笑ったお人形だった。

 昔の私だったら考えられない表情。私はいつも無表情で冷たい子って言われてた。

 ふと無表情なお人形を見つけた。これは昔の私。無表情なお人形をそっと手に取った。

 今の私は隼人さんと一緒にこんなに楽しく笑ってる。みんなと楽しく笑って料理をしたり、お買い物に行ったり。

 私は本当に変わったと思う。みんな隼人さんのおかげ。そして、花ちゃんやミノリちゃんやレベッカさんのおかげ。

 あなたのおかげで私の人生は豊かになった。私もあなたの人生を豊かにしたい。

 私が手に取ったお人形を隼人さんがひょいっと取り上げた。

「あっ」

「これは俺が食べちゃう」

 隼人さんはパクッと頭からかぶりついた。

「あ、固い」

「隼人さん、それ飾り用だから固いのです」

「先に言ってよー」

「隼人さんがいきなり食べちゃうからいけないのです」

 レープクーヘンをくわえたままの隼人さんと目が合ったから、思わずプッと吹き出してしまった。

「笑うなよ」

「だって、おかしいんだもん」

 見つめ合って、二人で声に出して笑った。

 それから二人でもみの木にお人形とハートのレープクーヘンを飾ったけれど、花ちゃんと私の画力の差がハッキリ見えて恥ずかしい……。

「やっぱり、お人形のを飾るのはちょっと恥ずかしいです……」

「上手下手じゃないよ、雪菜が描いたことに意味があるんだ」

「……はあ」

「雪菜は知らないと思うけど、雪菜が描いたこの人形を見るだけで、俺は元気をもらってるんだよ。だから、このまま飾ってほしい」

 そんなことを言われちゃったら、断れないのです。私なんかの描いた下手な絵で元気になってもらえるなら本望だし、すごく嬉しい。

 そんなこんなで、我が家のクリスマスツリーには、いろんな表情をしたお人形たちがたくさん並んだのでした。
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