嫌われ者に恋をしました*エピソードplus
静かにしていたクネヒト・ループレヒトが、突然動き始めた。
サンタクロースから預かっていたはずの大きな杖で床をドンドン叩いて子どもたちのところに近付いていく。一気に子どもたちの表情がこわばって緊張が高まった。
やっぱりこれがないとね!なまはげの「悪いごいねがー」的なアクション!
「雪菜、目を輝かせて楽しそうだね」
「エッ?」
隼人さんには、私が子どもたち以上に楽しんでいることがバレていたらしい。
だってだって。クリスマスパーティーなんて初めてなんだもん。なんだかとってもワクワクしてしまうのです。
クネヒト・ループレヒトは子どもたち一人一人にグイッと近付いて何かを質問すると、答えた子どもに袋からお菓子を出して渡している。
あれ?懲らしめるんじゃないの?プレゼントを渡すのはサンタさんなんじゃないの?
お菓子を握って戻ってきた彩花ちゃんに聞いてみた。
「さっき、黒い服の人に何て聞かれたの?」
「お父さんとお母さんの言うこと聞いていい子にしてる?って聞かれたよ」
「彩花ちゃんはいい子にしてるもんね?」
「うん!だからお菓子もらったんだ」
なるほど。クネヒト・ループレヒトは悪い子は懲らしめて、いい子にはお菓子をくれるようだ。
「悪い子はどうなっちゃうの?」
「あの袋に入れられて、どっか連れてかれちゃうんだって!キャー!」
彩花ちゃんはキャアキャア言って花ちゃんに抱き付いた。陸斗くんもお姉ちゃんの真似をして花ちゃんに抱き付く。
「わあ!こらこら、重いよー」
ふと、いつもキツネっぽくてキツい雰囲気の阿久津課長が、すごく柔らかい雰囲気で花ちゃんたちを見ていることに気が付いた。
愛する人と、愛する人との間に生まれた子。愛する人と自分に似ている子。それはやっぱり幸せだよね?
……?
あ……。そっか。
私、大変なことに気が付いちゃった。
っていうか、今までどうしてそう思わなかったんだろう。
愛する人の子どもがほしい。
私、愛する隼人さんの子どもがほしい。
どうしてこんな大事なことに気が付かなかったんだろう。