嫌われ者に恋をしました*エピソードplus
私、自分と子どもの関係にばかり目が向いて悩んだりしてたけど、子どもって隼人さんの子どもなんじゃない!
どうしてそんな大事なことが欠落していたんだろう。
そのことに気が付いたら、ものすごく子どもがほしくなってきた。
隼人さんの子どもがほしい。
私って、なんて自分勝手なんだろう。ほしいとかほしくないとか。自分のことしか考えてない。自分中心。ホント嫌になっちゃうな……。
ウツウツと考えごとをしていたら、クネヒト・ループレヒトが私に近付いて来た。
ん?もしやっ!また中高生と間違えられた?
「奥さんに質問です」
「?」
あれ?日本語?奥さんって……この人誰?
「ちゃんとお父さんとお母さんの言うことを聞いて、いい子にしていましたか?」
「……」
その質問って状況によっては残酷だな。私はお父さんを知らないし、お母さんの言うことは聞いたって叩かれた。
私が困ってうつむくと、その人はフードを外してにっこり笑いかけてきた。フードを外したその人は、暗いクネヒト・ループレヒトのイメージとはかけ離れた、爽やかな日本人の若者だった。
「悪い子なら、袋に詰めて連れ去りますよ?」
「えっ!」
笑顔でいきなり手を掴まれたから、驚いて身を引いた。その瞬間、背後から猛烈な殺気が膨れ上がる。
……えっと隼人さん?殺気、出しすぎです。
「阿部っ!手を離せ!オマエ、飛ばす!ぜってー辺境の地に飛ばしてやる!」
「あははっ、冗談ですよー。嫌だなあ、部長。本気にしないでください」
「冗談なら、さっさと手を放せっ!」
グルグル唸り声が聞こえてきそうな隼人さんの威嚇に、その人はニタッと笑ったまま私の手を放してくれない。
「いつもはクールなのにね。部長、いい感じで番犬みたいですよ?部長のそんな顔が見られて嬉しいなー。それにしても奥さんの手、柔らかいですね」
「!」
ヤダッ!
急に手を触られていることに不快感を覚えてブンブン手を振った。
「阿部!放せよっ!妻も嫌がってる!」
「えー?奥さん、嫌じゃないですよね?」
「イヤですっ!」
私がキリッと睨んでハッキリ言うと、あれ?と首を傾げて、阿部と呼ばれた人は私の手をパッと放した。