嫌われ者に恋をしました*エピソードplus
以前の私は、瀬川さんのこともそうだけど、子どもの頃のお母さんとの関係とか、辛い記憶を常に身近に持つようにしていたと思う。
それは、忘れられないからっていう理由だけじゃなくて、その辛い過去に意味を見出そうとしていたからのような気がする。
過去に意味がないわけじゃない。
でも、その過去が緩やかに自分のものになって、自分に自信を持って生きている今の私を作り上げているのなら、もうそれでいいんじゃない?細かくこだわらなくてもいいじゃない?
そう思えるようになってきた。
愛する隼人さんに愛されてるから私は幸せ。今の私は前向きに生きていられるから、いちいち昔のことにこだわらなくても、もう平気。
だからね、瀬川さんのことみたいに昔の細かな嫌なことは、忘れてしまっていいのです。隼人さんに夢中になって、きれいさっぱり忘れてしまっていいのです。
ギューッてしてほしくて、朦朧としながらも薄目を開けて、声にならない囁きと共に隼人さんに両手を伸ばしたら、かぶりつくように力強く抱きすくめられた。
硬い腕が腰の下に入って肌が密着する。ゴツゴツするけど締め付けられる心地いい圧迫感。求めていた甘い満足に指先まで痺れる。
耳元の息遣いに隼人さんも夢中になっているのを感じて、必死で背中にしがみ付いた。
隼人さん、気持ちいい?
私、すごく気持ちいいの。
狂おしく追い求められる幸せ。自分から求めることができる幸せ。同じ快楽を共有する幸せ。愛されてるって強く感じすぎて、意識が遠退いてしまうくらい本当に幸せ……。
終わった後、しばらく強く抱き締めてくれていた隼人さんは、柔らかく私を包むと優しい瞳で何度もキスをしてくれた。
そして体を離した後、隼人さんは手を繋いだままスウッと眠ってしまった。……珍しい。疲れちゃったのかな?
穏やかな寝顔をそっと見つめる。……やっぱり私、この人が大好き。この人のそばにいられて本当に幸せ……。
すぐには眠れなくて、仰向けになって天井を見ながらお腹の上にそっと手を当てた。いつもと違う、少し違和感を感じるお腹。
出来るかな?赤ちゃん、出来るといいな。
そんな風に思える自分が嬉しかった。そんな風に思えるようになるなんて、嬉しくて幸せで、涙がわいて目の縁からこぼれ落ちた。
子どもをほしいと思ったこと、隼人さんにそれを伝えられたこと。こんなに幸せな気持ちになれたこと。
もしかしたら、これは神様が私にくれたクリスマスプレゼントだったのかもしれない。