嫌われ者に恋をしました*エピソードplus
「雪菜、早く子ども欲しい?」
「それは、そうですね」
「そっか……。でも大丈夫だよ。そのうち出来るよ」
あれ?隼人さんにしては、ずいぶんアバウトな回答。
「はあ……」
「だって、そんなすぐにポンポン子どもが出来てたら、みんな大家族になっちゃうだろ?」
うーん、それはそうだけど、そういう問題じゃないのです。
「それはまあ、そうですけど」
「まあ、俺にできることなんて、頑張ることくらいなんだけどね」
「……」
そんなことを言われて、ちょっと頬が赤くなった気がした。
「そんな答えじゃ不満?」
「い、いえ……。そんなこと、ないです」
あ、やだ。そんなこと言ったら、頑張ってほしいみたいだった?ドキドキして隼人さんを覗き見ると、隼人さんは少し寂しげな顔をした。
「まあ、子どもが欲しいと思ってからそんなに時間も経ってないしさ。1年経っても出来なかったら調べてみる?もしかしたら俺が原因かもしれないし」
ハッと顔を上げた。自分が原因なのかも、とは思ってはいたけど、隼人さんが原因かどうかなんて考えてもみなかった。でも、そういうこともあり得るんだ。
隼人さんは優しくニコッと微笑んだ。
「大丈夫!そんなに気にすることないよ。こればっかりは授かりものだからね」
「そう、ですね」
それはわかってる。わかってるんだけど。それはそうなんだけど。
それでも、子どもがいる人を羨ましいなんて思ってしまう醜い自分が嫌なのです。
「それでも気にしちゃう?」
「……」
うーん、どうして隼人さんにはこう、私の不安みたいなものが伝わってしまうんだろう。どうせなら言ってしまおうか?でも、人のことが妬ましいなんて言ったら嫌われちゃう?
……でも、それが本当の私なの。私は醜い人間なの。それでもいいですか?
「えっと……今日ね、花ちゃんの家に行って彩花ちゃんと陸斗くんも一緒にイースターエッグを作ったんです」
「うん」
「彩花ちゃんも陸斗くんも可愛くって、花ちゃんには子どもが出来たのに、どうして私には出来ないのかな、なんて思ったりして……」
二人は本当に可愛かった。可愛い二人の輝きに照らされて、自分はどんどん影になって暗い闇に絡め取られていく気がした。