嫌われ者に恋をしました*エピソードplus

「辛くなった?」

 隼人さんの優しい瞳が私を見ている。その瞳を見るとつい、いろんなことを話したくなってしまう。

「……辛い、というか、花ちゃんと子どもたちを見ていたら羨ましくなって、このまま私には子どもが出来なかったらどうしよう、なんて焦って……。そうやって羨ましいって妬む自分もすごく嫌だったんです。醜くて嫌だなって、落ち込んだんです」

 全部言ってしまった……。こんなことまで言う必要なかったんじゃない?……こんな醜い私のことなんて、嫌いになる?

 隼人さんは手を伸ばして、私の手を握った。

「羨ましいって、思っちゃダメかな?」

「えっ?」

 意外なことを言われて顔をあげた。だって、羨ましくて妬むなんて、ダメじゃないの……?

「羨ましいのは本当のことなんだから、仕方がないよ。羨ましいって思うくらい、雪菜は子どもがほしいってことだろ?」

「……う、うん」

「そりゃあ妬んでるばかりじゃ良くないけど、羨ましいって気持ちを原動力に変えればいいんじゃないのかな?だからその分、できる限りの努力はしよう?後悔しないようにさ。それで子どもが出来れば嬉しいし、出来なかったらそれはやっぱり仕方がない。万が一子どもが出来なかった時、人を羨ましいなんて思わないように目一杯の努力をして、ダメならきれいサッパリ諦めよう。そんなに簡単には割り切れないかもしれないけど。その時は今と変わらず二人で楽しく過ごせばいいさ」

「……はい」

 隼人さんはすごいな。いつも冷静に私のごちゃごちゃした頭の中を理解して、きれいに整頓してくれる。言葉に変換してくれる。

 隼人さん、こんな私の醜い心も受け入れてくれるの?こんな私でも嫌いにならないの?

 もしも子どもが出来なかったら……。隼人さんの言う通り、簡単には割り切れないかもしれない。でも、隼人さんはいつも私の心を支えてくれている。

 だから、私はきっと大丈夫かな?
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