嫌われ者に恋をしました*エピソードplus
結局、花ちゃんの興味は自分の下着購入へ移行したのか、さっさと私の婦人体温計を見つけて買わせると下着屋さんへ直行した。
お店に入るだけでもドキドキするのに、花ちゃんは気にする様子もなくズカズカとお店の奥まで入り込み、私の通訳を介しながらじっくりゆっくりとスッケスケの下着を吟味し始めた。
「ねえ、見て見て!このレース、チョー可愛くない?」
そんなことを言われて覗き込んだ下着は芸術的な刺繍が施され、なかなかの透け具合。見るだけでもドキドキしちゃう。私一人なら、きっと目にすることもなかった下着。
でも、ちょっと勇気を出して触ってみた。柔らかくて滑らかで、すごくいい触り心地。聞くとシルク100%らしい。
素敵……。私には着れないけど。
考えてみたら、友達と下着を見に来るなんて初めてかもしれない。これはこれですごく楽しい。
三十手前で知る楽しみじゃないのかもしれないけれど、でも、人生にはこんな楽しみもあるんだ。
なんだか無性に楽しくて、久しぶりにはしゃいでしまった。
結局花ちゃんは、びっくりするくらい透けている下着を買っていた。それってほぼ見えてるんじゃない?着る意味、あるのかな?
そして私は全く透けていない機能的な下着を買い、じゃあねーと手を振って別れた。
友達と下着を買いにいくなんて。こういう楽しみ、私、今まで知らなかった。
料理教室も単純に楽しいと思っていたけれど、それは料理が楽しいだけではなくて、女同士で集まって自然と言いたいことを好きなように喋ったりしているから楽しいのかもしれない。
いつも来るわけではないけれど、料理教室に時々参加するドイツの若奥様たちも日本人と同じで、旦那のこんなところがムカつく、なんて話でよく盛り上がる。そういうのは万国共通らしい。
子どもの面倒みない、皿洗いしてくれない、俺は仕事をしてるんだから家では何をしてもいいんだと思っていやがる!偉そうに!……などなど。
でも、女同士でしか言えないことを喋るのってすごく楽しい。なんでだろう。理解を得られている感じがするのかな?不思議な連帯感があるのかもしれない。
そもそも、料理教室ってそういう主旨だったのかもしれないな。もちろん真面目に料理も習うけど、料理はきっかけなだけであって、本当はみんなで集まってお喋りするのが目的だったのかも。
今さらそんなことに気がつくなんて、私ってやっぱりちょっとズレてるのかな……。