嫌われ者に恋をしました*エピソードplus

 買ってきた体温計を持ってきて見せると、隼人さんは早速箱を開けて「お!デジタルだ」とか言って、電池を入れボタンを押し始めた。

「いいね!コレ細かく測れるじゃん!ん?この紙、グラフを書くのかな?でも1枚しか入ってないから、コピーして使えってことだろうな」

 ああもう……、そんなに箱の中身を広げちゃって。説明書とか読むのに辞書を引いたりして時間がかかりそうだったから、後でじっくり見ようと思ってたのに。

「あっ、裏にちゃんと例が書いてあるよ。ええっと、なになに?最初が低温期、こっちが高温期だって。……んー?これ何て意味だろうな」

 隼人さん、目を細めてまじまじと説明書を見てる。そのうち「この日が排卵日だって!」とか「この段階で生理がくるのか」なんて無邪気に大きな声で言い出しそう。

 だから、スッと説明書を取り上げた。

「あっ!」

「説明書は私がちゃんと見ておきますから」

 隼人さんはオモチャを取り上げられた子どもみたいに一気に不機嫌になった。

「なんで?いいじゃん!一緒に見ようよ」

「いいんです!……なんか恥ずかしいから、後で見ておきます」

 隼人さんはジロッと不機嫌に私を見た。

「何を今さら恥ずかしいなんて言ってんの?」

「……だって」

「ふーん……、まだ足りないんだ?」

「?」

 足りない?何が?

「雪菜の恥ずかしいところをあんなにじっくり見てるのに、まだ恥ずかしいとか言ってるなんて、雪菜は見られ足りないんだな」

「そっ、そういうことじゃないです!」

 もう!何の話?何を言っているんですか!

「いや、そういうことだよ」

「違いますっ!」

「違わないね。こうなったら、雪菜がもう二度と恥ずかしいなんて思わなくなるくらい、恥ずかしいことをしないといけないな」

「……」

 隼人さん、さっき入ったスイッチが変な方向に切り替わりましたね?悪そうな顔でニヤリと笑ったりして。

 今、あなたの頭の中はどうなっているの?

「まずは一緒に風呂に入ってもらおうかな」

 あっ!言うと思った!

 一緒にお風呂に入る、は隼人さんの好みだから絶対に言うと思った。そのくらいは想定の範囲内ですよっ!

 前にも何度か一緒にお風呂に入ったから、もう平気だもん。一緒にバスタブに浸かるだけでしょ?
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