嫌われ者に恋をしました*エピソードplus
またパチッと火の粉が飛んだ。隼人さんの腕の中から燃え盛る火柱を覗き見る。
さっきよりも炎が小さくなった?炎の勢いに慣れてきたせいだろうか。
めらめらと激しい業火で世界を凌駕する悪魔みたいに見えていた火柱が、ふざけて踊る炎の妖精みたいにかわいらしく見えてきた。
隼人さんに包まれて守られているから?それとも慣れてしまえばそんなもの?
もしかしたら私は、強くなったというよりも図太くなったのかもしれない。
細かいことは気にしない。もう、いちいち自分の傷口を見て傷ついていることを確認しなくても大丈夫。
気楽に自然に当たり前に、私は自分の存在を受け入れられている。そういうのも強さと言っていいのかな?
「もしかしたら、私は図太くなっただけかもしれません」
私がそう言うと隼人さんは「あはは」と笑った。
「いいじゃん!それはいいことだよ!目指すはテレビを見ながら煎餅かじってゲラゲラ笑う雪菜だからね!」
「え?うーん、それは……」
隼人さん、前にもそんなこと言っていましたね?
げらげら笑う、まではできないけれど、最近は声に出して笑うことが普通になってきた。
そういえば、どうして私、笑わなかったんだっけ?
……そう、お母さんに笑うなって、人と関わるなって言われたからだ。
どうして笑っちゃいけなかったのかな。お母さんの本心は私にはわからない。人様に失礼にならない限り、笑いたかったら自由に笑ってもいいんじゃないのかな、と思うけど。
それにしても人の感情を制限をするなんて、私とお母さんってやっぱり全然違うんだなって実感する。
世の中にはいろんな人がいるもの。お母さんはそういう人だったんだね?でも、だからといって私がそうなるわけじゃない。
だからね、お母さん。私は大丈夫。
私はお母さんの存在をなかったことにしなくても、いつまでも辛い記憶を持ち続けていても、私はお母さんとは違う道を行ける。
だから普段は昔の細かいことなんてすっかり忘れて、でも時々思い出して、私は今の自分の人生を楽しく謳歌するの。
そういうのを強さと言っていいのなら、私は本当に強くなったと思う。