嫌いになりたい
既にお互い手が止まってしまっている。
苑実がノートを写すなら、私も少しはレポートを進められると思っていたけどやっぱり思うようにはいかないらしい。
けれど、そもそも急ぎじゃないし、冬休みに取り掛かる予定のものを前倒ししているだけ。
根を詰めてもしょうがない。
久し振りに苑実の惚気話に耳を傾けてもいいかなと珍しく思ったところで、いきなりの話題変更に遭遇する。
「で?一方で茗は今日もまたお隣のねぼすけくんと一緒に登校したわけ?」
ランチ前。
やっぱり私の予定は全くをもって無意味だったことを確信する。
直後に眉間に皺が寄るのはいつものこと。
私がこうなることを百も承知で苑実はこの話題を口にする。
完全なる確信犯だ。
「……別に」
「ってことは一緒だったのね」
「単なる不可抗力だし。あっちも1限あるだけ」
行き先が同じ。
開始時刻も同じ。
朝練があるわけじゃない、余裕を持って早く行く必要がない限りは、隣人の私達が朝に顔を合わせるのは特別不思議なことじゃない。
仕方がない。
今までの延長だと思えばいいだけの話だ。