嫌いになりたい
「ってかさぁ」
これ以上の鋭い突っ込みは無用。
逃げ場確保のために私はパソコンを再起動させた。
けれど、そんな私の弱気を知る由もない苑実はさらなる爆弾を落とす。
「好きな人と密室に二人きりで何も起こらなかったわけ?」
彼女は私の話を全く聞いていなかったのだろうか。
「だから好きじゃないって」
「はいはい、そういうことにしといてあげる」
どうして上から目線なの。
「で、実際はどうなの」
「あるわけないじゃん」
だから即答する。
「真面目にお勉強してただけですけど」
「よく我慢できたね」
「私が?」
「だって柊汰くんは草食でしょ」
「私が肉食だって言いたいの?」
「強暴だから肉食でしょ」
その理論はひどく間違っている。
「第一好きじゃないから」
何度言えばわかってくれるのか。
やっぱり苑実はしつこいだけだ。
意を込めても一向に伝わる気配がない。
「じゃあ、百歩譲ろうじゃないの」
いつまで上から目線なの。
「そんな日々を過ごしてるあいだに好きになっちゃったと?」
禁断の先生と生徒ってやつ?
と嬉しそうに話す苑実の心がわからない。
どこらへんが禁断なのか。
そもそも全く百歩譲ってない。(一歩すら譲ってない)
「話聞いてる?好きじゃないんだって」
「あのさぁ、茗。バレてないと思ってるの?否定すればするほど茗の場合は肯定だからね。見苦しいよ」
なんだかとってもひどい言い草だ。
これでもいろいろ世話してやってんのに、苑実は確実に恩を忘れている。