嫌いになりたい



『榎並柊汰です。よろしくお願いします』



まさか同じクラスになるとは思わなかった。

とはいっても、学年たったの3クラス。
確率は3分の1だ、大したことはない。


事の発端は我が家の隣に家が建ったこと。
物凄い勢いで建物が登場した。

全く気付いていなかったわけじゃない。

通学路と真逆だったから大して気に留めていなかっただけで。
食卓の話題に上がったような記憶も無きにしも非ずだけど、おそらく聞き流していた。

だから、どんな人が住むんだろうとか、親しくなれるかなとは一度も思わなかった。

近所付き合いの得意なお母さんは今頃ワクワクしているんだろうくらいは思っていた気がするけど、あの頃の私は上達し始めたバスケットボールに夢中で正直どうでもよかった。
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