嫌いになりたい

『茗ちゃん、待ってよ!』

『……は?今なんつった?』

『だから待ってって!』

『違うわ!その前!』

『へ?』

『“茗ちゃん”ってなんだ!』

『え、だって、田戸倉さんって長いだもん』

『だからっていきなり“ちゃん”付けとか!』

『俺のことも名前でいいよ、茗ちゃん』

『そういう問題じゃない!』

『そんなに怒らないでよ、茗ちゃん!あと足速いよ!』

『毎日部活で鍛えてるんだから当たり前でしょ!』

『待ってってば~!』

『……もうっ!柊汰!早く!』



時間はかからなかった。

柊汰はただの一度だって先に起きていたことがない。
毎朝私が起こしにいくことを申し訳ないと思ったことなんてないのだろう。


聞き飽きた口癖。
“頼りになるね”


厚かましい以外の表現があったら教えてほしいくらいだ。
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