嫌いになりたい
高校は中学以上に大変だった。
バスの発車時刻との闘いは思い出したくもない。
ローファーで走るのは何気に疲れるのに。
だけど、結局私は柊汰とずっと一緒にいた気がするし、顔を会わせない日はほとんどなかったように思う。
目覚めるとそこにいる。
それこそ家族みたいに。
だから、あいつの悪いところもいいところも嫌というほど知っている。
私がテストで悪い点を取ると心配してくれたし、部活の大会にも応援に来てくれた。
やっぱり家族だ。
大学に入ってからは履修が異なるからさすがに世話係から卒業したけれど。
というか、『茗ちゃん、大学でもよろ、』までしか言わせなかったのは私。
沙智子おばさんは苦労していて、未だに私に6年間のお礼を言う。
きっと、受験勉強の手伝いをしてくれたことは今までのお礼だろう。
さすがの柊汰にも律儀なところがあるってだけの話。
苑実が目を輝かせて期待するような過去もましてや未来も存在しない。
私たちは家族なんだから。